[A] Across The Universe
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赤めだか / 立川談春

しばらくブログを書かなくなってしまった。本自体はそれなりに読んではいるのだけれど。
Twitterなどの影響があるのかもしれないが、でもそもそもTwitterでもそれほど呟いていないし。
ログくらい残して記憶の定着は行わなければならない。

この本も随分前に読んだにもかかわらず書き残してなかった。
談志師匠が亡くなって思い出した。

立川流のいわゆる四天王の一人、談春。
立川流の中でも、世間で言われるところの正統派の落語をする談春師匠。
落語には立川流のクセがなく、万人に受け入れられるスタイルの落語家だと思う。

その談春師匠が、家元である談志に弟子入りして以降のあれやこれやを書き綴るエッセイ。
こう書くとただの談春思い出話か、と思ってしまうがそうではない。
彼はとにかく抜群に文章が上手い。
落語家のくせに、いや落語家だから、などと言う枕詞は全く必要がない。
誰が読んでもストンと腑に落ちる、絶妙な文章を書く。
その道の最高級のプロではあるが、文章を書かせても素晴らしい。

談春曰く、立川流は一家ではなく研究所。
研究所だからとびきり強い生命体も生まれるけど、その陰で驚くほどの犠牲も生まれる。
能力を優先するが上での平等と自由もあるが、残酷なまでの結果も出る。
そんな残酷な世界に飛び込んだ、今ではチケットもなかなか取れない談春の弟子時代からの話。

落語ファンならず楽しめる。
だって文章が上手いから。

本の終盤、特別編として「立川流後輩達に告ぐ」という章がある。
これはまぎれもなく、家元談志亡き後のことを真剣に後輩に諭している章。

そして、もう一つが小さんと談志の話。
談春が真打ちになる際の話だが、このエピソードは・・・
落語ファンならずともある種の感慨を覚える話。

本人は結構ガラがよろしくないのだが、内容は絶品。
今晩、早速もう一度読み直すことにする。

そうそう、談春が談志に弟子入りしたきっかけの高座は芝浜だった。


この本に直接関係はありませんが、談志師匠、大好きでした。
あなたのおかげで落語を好きになりました。

立川流に幸あれ。






赤めだか
赤めだか
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ぼくと1ルピーの神様 / ヴィカス・スワラップ

映画はまだ見ていない。
スラムドッグ$ミリオネアの原作。
しかし、この作品を映像化すると面白くなるであろうことは容易に想像できる。

物語は、主人公が逮捕されている場面から始まる。
逮捕容疑は、クイズで賞金を獲得したのは良いが、不正を働いたというもの。


そこへ突然弁護士を名乗る女性が登場し、彼を助け出す。
弁護士は彼を家に連れて帰り、録画されたクイズ番組の1問目から再生しながら、彼にすべてを正直に話すように諭す。

主人公の名前は「ラム」。
ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教が同居しているその名前が彼の波乱万丈の生涯を表していた。
クイズ1問ごとに語られていく彼の生涯。


インドという国の可能性、暗部、混沌、そのすべてを強烈に濃縮したようなエピソードが彼の口から語られていく。

この物語は、構成だけをそっくり真似て他の国でのエピソードに作り変えることも手法としては可能だろう。
しかし、それではこの物語が持つ説得力が低下してしまう。
やはりこの物語が語られるのは、インドという国でなければならなかった。

時間を前後しながら語られていくエピソードが様々な伏線となり、後々読者を驚かせ、かつ楽しませる。
時折ミステリーを読んでいるかのような錯覚に陥りながら、最後まで飽きることなく楽しませてくれた。

とても素敵な時間を堪能した。





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占星術殺人事件 / 島田荘司

読み始めからやや難儀する。

なにせ事件が起きたのは昭和11年。
自分の5人の娘から、それぞれ最良の部分を用いて最高の女性を作り上げることを妄想していた、犯罪者と思しき男性の難解な手記から物語は始まる。

実際に彼の娘たちは殺害され、バラバラ死体が発見されていた。
しかし、彼女たちを殺害したのは狂気染みた考えを持つ父親ではなかった。
父親は、彼女たちが殺害される以前に屋内で殺害されていた。
時代感のある文章と、狂気を感じさせる内容が相まって、最初からこの物語の雰囲気が決定付けられる。

時は流れて昭和53年。
当時の事件は未だ犯人不明の謎のままだった。
また、殺害された女性の一部を組み合わせて作られたであろう人造人間?「アゾート」が日本のどこかに隠されている、とも言われていた。

鬱を患い、時折体調を崩す占い師「御手洗」。
その知り合いが御手洗に謎解きをけしかけ、自らも謎に挑む。
何度も事件の核心に迫りつつあると思わせながら、その説は既に過去に考えられていたものであるなど、読者は何度も翻弄される。

彼らは事態打開のため、事件に関係する人物を尋ねて京都へ向かう。
途中で警察が介入してきたことにより、事情が複雑になり彼らが推理するのに必要な時間は限られていた。
最終的に彼らは真犯人を突き止められるのか。

全体を通してやや読みにくさは否めないが、トリックが秀逸。
叙述物でだまされるようなある種の爽快さではなく、このトリックは感動に近い。
こんな面白い作品を今まで読んでいなかったのが悔やまれる。

島田荘司って初めて読んだけどすごい。
きっとすごく頭良いのだろうな。
他の作品も読んでみよう。






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原発・正力・CIA / 有馬 哲夫

本書の題名は「原発 正力 CIA」だが、読後に感じる重要度から並べると「CIA 正力 原発」ということになる。
正力松太郎という稀代のメディア王がいかにしてその野望を成し遂げようとしたのか。

正力の背後に控えて彼を操ろうとしていたのはCIA。
最終的には決裂に至るものの、CIAがいかにして日本という国を操ろうとしていたのかが良くわかる。
いや、現在も巧妙に操っているのだろう。

非常に権力欲が強く、どうにかして総理大臣の椅子が欲しい正力。

もともと正力は、日本全国のテレビ、電話、電報、FAX等を統合する通信網の展開を行おうとした。
通信網を独占する真のメディア王を目指していた。
しかし、既に高齢でもあった彼は、様々な利権を手中にするには権力を一手に握る総理大臣を目指すことが近道であると気づく。

一方、反共の砦として日本を使いたいCIAは、正力を資金的にバックアップすることによって日本の世論を反共に誘導しようとしていた。
まず、ここで両者の利害は一致する。

そこに、ビキニ諸島の水爆実験によって第五福竜丸が被爆してしまうという事故が起こる。
高まる日本での反核運動を懐柔すべく、核の平和利用を言い出した米国に対し、原発推進の先頭に立つことにより政治的優位に立とうとする正力。
CIAも正力の魂胆を正確に分析し、政治的に利用されることを警戒していた。

正力松太郎の後半生とは、CIAとのしのぎ合いの人生だったということだ。

正力にとって原発とは、総理への道の道具でしかなかった。

ただし、本書を読むと良くわかるが、もちろん原発の導入は正力の意思だけによるものではない。
電力業界、そしてエネルギー安全保障の観点からの政治的な勢力(中曽根氏等)も推進派だった。
その中で、もっとも不純な理由から原発を利用しようとしたのが正力だった。
故に彼は「原子力の父」などではない。

そして、公正なメディアなんてこの世に存在しないということも改めて良くわかる。




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幽霊人命救助隊

一生懸命崖を上り、やっとのことでたどり着き、引っ張り上げられた崖の上には摩訶不思議な世界が広がっていた。

そこには自分以外の3人の人間がいた。
そこでその3人に教えられたのは、衝撃的な事実だった。
自分は自ら命を絶ったのだと。
なんと自分も含めたその4人は、自殺をして命を落とした過去を持っていた。

そこへ神様が空からパラシュートで降りてきて指令を出す。
その指令とは、下界に戻って7週間の間に自殺しそうな人を100人救うこと。
こうしてお揃いのつなぎを身にまとい、救助隊としての活動を始めることになる。

この作品の面白さのひとつは、救助隊の面々のキャラクターが良く作りこまれていること。
それぞれ生きていた時代が違う、やくざ、サラリーマン、ギャル、受験生。
それぞれの特徴がうまく生かされており、生きていた時代背景が異なるが故の話題の相違が、暗くなりがちなテーマに良い意味での「軽さ」を持たせている。
そして、下界で生きている人たちが抱えている悩みとは、実は彼らが過去に経験していた心の痛みでもあったりする。
この辺りが、彼らの救助活動に生かされていく。

死んでしまった救助隊だからこそ、もう取り返しがつかない立場にいる彼らだからこそ、理解できる苦しみがある。
そしてもう戻れない彼らだからこそ、生きている人には大切にして欲しい何かがある。
真面目に伝えようとすると、どうしても重くなりがちなテーマを、幽霊の救助隊という設定を使うことで、軽さと重さを対比してみせる巧さ。
読み物として完成度が高かった。

ちなみに、私がこの本を購入したのは、とある書店のPOPに惹かれたから。
とにかく絶賛されており、幽霊の救助隊という設定が気になり、「泣ける」という言葉にも反応した。
が、この小説ではまったく泣けなかった。
人生経験の少ない中高生であれば、泣くことはあるかもしれない、とだけ言っておく。





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小さな自分と大きな世界 / 40mP

なんだ?ボーかロイドって。
最近のオタクの趣味はわけがわからん。
ぎこちない声に似せた機械音の歌のどこが良いんだ?
それが始めの頃の感想。

でもそれなりに流行り始めて、興味本位で聞いているうちにだんだん違和感がなくなってきて、最近ではボカロの調教テクニックもすさまじく上手くなってきて、中には本物の人間が歌っているかのような曲まで出来てきた。

そんなボカロの中でも40mPの「キリトリセン」という曲を大好きになってしまい、最終的に40mPのCDまで買ってしまった。
このCD発売とほぼ同時に「からくりピエロ」も公開され、今では「からくりピエロ」が一番気に入っている。
詩のセンスも良いし、切なげな曲調が完璧に仕上がっている。

そしてこのアルバムには捨て曲がない。
ボカロ初心者にこそぜひ聞いて欲しい。2000円と値段もお得だし。


とオススメしても拒絶反応を示す人はいる。
しかし、ボーカロイドという音楽の一分野はこれからも発展し続けるだろう。
ソングライティングの才能がある人にとっては、歌手に歌わせる必要がなく、また作った歌をネット上で公開できる場所が確保されているから。
40mPの曲を本物の歌手が歌う日もそう遠くないんじゃないかな。






機関車先生

みずみずしい。
最初から最後までなんてみずみずしい小説なんだ、と感嘆しながら読みすすめた。

時は終戦から程ない頃。
瀬戸内海に浮かぶ小さな島にやってきた口のきけない教師。
口をきかんし、機関車のように大きな身体だから機関車先生。

島での生活、季節の移ろい、人々の優しさ。
目をつむると、まるでその島で彼らと一緒に体験したかのような情景が広がる。
ほんの少しの季節だけ過ごしただけで、子どもの心に、島の人々の心の奥深くに刻み付けられる人。

どれだけ言葉でうまく伝えようとしても伝わらないことがあるのが心。
でも、言葉を発しなくても伝わるのも心。
語らずとも、人柄はにじみ出てくるもの。

この小説を読んで改めて思った。

この読んでおくと、人生を過ごしていく上で参考になることが多いと思うな。




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伊集院 静
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小僧の神様・城の崎にて/志賀直哉

別に志賀直哉ファンだったわけではないが、学生時代から読んでみたかった作品を今になって思い出して初めて読んでみる。

文体のせいもあって読み飛ばすような読み方も出来ず、淡々と読み進めるとしみじみと文章が上手い。
ライトノベルや日本語が間違っている人気作家を読むことに反対ではないが、人生のある一時期にはこういう作家の作品を読まなければならないと感じた。
小説を読む上での基本的な姿勢、読書をする上でベースとなる日本語は、こういった文学作品から学ばなければならないのだろう。
読書をする上での基礎力といっても良いかもしれない。

作品の内容は、小僧の神様が特に有名な短編集。
全体を通しては、典型的な私小説の要素が満載。

自分の身に起こっている女性問題などを赤裸々に、かつ客観的に描いている。

率直に、先生はよくもそんなことまで小説のネタにしますねぇ、という感想を持つが、当時の読者はどのような感覚で読んでいたのだろう。
ドロドロした内容にもかかわらず、不思議なことに悲壮感があまり感じられない。

面白いから読んでみて!と推奨できる作品ではないが、やはり一生のうち一度は読んでおいたほうが良い。



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なりたい自分になる心理学/国分 康孝

もっと若いうちに読んでおきたかった。
内容については、文句の付け所がなく、書かれていることにも共感する。
しかし残念。

もう10年以上人間哲学、成功哲学系の本を読み続けてきたため、書かれていることのほとんどは既に知っていることだったからだ。
逆に言えば、これから人間哲学、成功哲学系の本を読み始めるのであれば、これほど本質をコンパクトにまとめてくれている内容の本はなかなかないだろう。

若い方々、まずはこの本から始めてみてください。
きっとあなたの人生は変わりますよ。





「なりたい自分」になる心理学 (知的生きかた文庫)
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あれから

あれから3ヶ月以上が過ぎた。

余震におびえながら、とんでもないことが起きていると身震いしてた。

ゼミで合宿した気仙沼、美しい浄土ヶ浜、ドライブといえば松島、朝日を見ながらビールを飲んだ七ヶ浜。
思い出深い東北の美しい海岸、街々が変わり果てた姿になってしまった。


死者1万5千人、3ヶ月経っても未だに行方不明者8千人。
愛する人を失うと周りにいた多くの人たちが深い悲しみに包まれる。
東日本大震災では、2万3千人の何十倍もの悲しみが日本中を覆いつくした。

元気を出そうって言ったってそりゃ無理な話だった。
被災された何十万人の方々は今も困難な暮らしを強いられている。
本当に温かくて純朴で我慢強い、東北の人たちの暮らしを津波は壊して行った。

自分は被災なんかしていないのに、毎日辛くて悲しかった。
映像を見ては自然に涙が出てきた。

震災のことを忘れてなんかいないけど、でもあのころのようなクッキリとした輪郭を持った不安ではなくなってきた。
やっと落ち着いて考えられるようになったのかもしれない。


春が来て桜が咲いて梅雨が来てもうすぐ夏がやってくる。
人間の生活が多少変わったところで、自然は何ごともなかったように当たり前に繰り返されていく。


まだまだ大変なことが続くでしょうが、みんなで命をつないで生きていきましょう。

辛くても、少しでも明るい方へ顔を向けて行きましょう。


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