雨天炎天 / 村上春樹 | [A] Across The Universe

雨天炎天 / 村上春樹

出版社は違うが、「遠い太鼓」の続編と考えて良いだろう。

1989年秋から村上春樹が訪れたギリシア正教「アトス」とトルコ一周の旅。

「遠い太鼓」からは違ってかなりシビアな旅が展開する。


女人禁制の地、ギリシアのアトス巡礼の旅に出かけるのは良いが、そこには幾多の困難が待ち受けていた。
そもそも巡礼の地だから、娯楽の要素は皆無。
娯楽の要素が無いだけならまだしも、修道院から修道院への移動は徒歩の上、道は険しい。
たどり着いた修道院は、修行の地であるが故に食事は非常に質素。

出版社の企画だとは言え、なぜこれほどまでに苦労して旅をするのか。

とある修道院では、カビが生えたパンを食べざるを得なくなる。


次に彼が回ったのはトルコ。

お人好しが沢山いることは理解出来る。
そして、トルコの置かれた国際状況が新聞よりも理解出来る。
複雑な歴史、多様な民族、国境を接する国々との軋轢。

アトスの旅行記に比べ、トルコの文章には戸惑いがみられる。
おそらく本当に戸惑っていたからだろう。

イスタンブール、カッパドキア。
観光旅行からだけでは理解出来ない、トルコの魅力満載。

とはいえ、やはり行ってみたい、という感想は持つことが出来ない。

アトスの禁欲的な行程。

ある種危険な雰囲気を感じるトルコ。


やはり村上春樹独特のエッセイであり、その地に行ってみたいとは思わない。


このエッセイ自体は何度読んでも楽しいのだけれど。





雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社
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おすすめ度の平均: 3.5
5 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドを思い出す
5 旅情気分をそそられる
3 読み物としては…
5 雑な本
4 たまに読みたくなる本