レキシントンの幽霊 / 村上春樹 | [A] Across The Universe

レキシントンの幽霊 / 村上春樹

短編小説もうまい村上春樹。

そのなかでもこの短編集はやや異色だろう。

書き直された「めくらやなぎと眠る女」以外の短編は読後感が悪い。
読後感が悪い、というか遊びが無い。

「沈黙」などは救いようがない。
救いようがないだけならまだしも、夢にまで見そうだ。
実際にありそうな話だけに恐ろしい。

おそらく、トーンが似た系統の短編を集めたのかもしれないが、何度も読みたいと思うものではない。

と言いながら何度か読んではいるが、読むたびに落ち込む。


読み終えた後に、ザラッとした感触が残る話ばかり。

村上春樹の違った一面を見るためには、読んでおく必要がある一冊。


「めくらやなぎと眠る女」は「蛍、納屋を焼く」に収録されている文章を改訂したもの。
テイストを残したまま、うまく話が短縮されている。
この話だけ、この短編集の中では一息つくことができる物語だ。


ちなみに昨日の日経のコラムで取り上げられた「7番目の男」は、この作品に収められている。






レキシントンの幽霊 (文春文庫)
村上 春樹
文藝春秋
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おすすめ度の平均: 4.0
4 この頃の春樹さんが好きだった…… 。
5 孤独を描いた短編集
5 彼だけ
5 魂の救済、そして光の射す方へ
5 いたぶり方が…