村上朝日堂 / 村上春樹 | [A] Across The Universe

村上朝日堂 / 村上春樹

村上朝日堂。


村上春樹が書く文章に安西水丸が挿絵を描くシリーズの第一弾。
文章と絵がかなりマッチしている。

元々は「日刊アルバイトニュース」に連載していた文章をまとめたものなので、読者の対象も限定的だったため、かなり軽めの文章と挿絵が心地よい。

思いっきり肩の力を抜いて書いていたであろう村上春樹が想像出来る。
一編一編が短いのでどこからでも始められるし、どこでも一旦やめることができる。

暇つぶしには最適なのだが、なぜこれほど軽いのか。
1980年代の初頭に書かれた文章のためだろう、意図的な悲壮感が全くない。

そもそもアルバイトニュースに悲壮感は必要ない。
今とは違うから。

改めて読み返してみると、今は亡き「全体がオレンジ色の銀座線」の車内の照明が一瞬消える話、など、あの時代を生きてきたものには、溜まらない懐かしさを感じる文章もある。
そうなんだよ。
初めて銀座線に乗ったときに、照明が一瞬消えたときには驚いた。
車内の色も薄いグリーンだったような。
ほんとに懐かしい。


そして、おそらくこの本の影響なのだろう。
私は村上春樹を想像するとき(もちろん写真で見たことは何度もあるが)、この安西水丸の独特なタッチの絵の本人を思い出してしまう。


まぁ、軽くて良い。





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5 この軽さ、絶妙
5 村上朝日堂
5 インターネットも携帯電話もない時代に
5 駄文に隠れる天才性
5 深みのある面白さ