そして夜は甦る / 原尞 | [A] Across The Universe

そして夜は甦る / 原尞

寡作のミステリー作家、原尞のデビュー作。

あえて翻訳物のチャンドラーを読み漁った末に、あの雰囲気をそのまま「原尞」のミステリーとして落とし込むとどうなるか。

まさに骨太の「完璧な」ハードボイルド・ミステリーが出来上がる。


この小説は、直木賞を獲った「私が殺した少女」の後で読んだのだが、デビュー作とは思えない仕上がりになっている。

翻訳調で、冷たく乾いた感じに仕上がった文体。
幾重にも張り巡らされた緻密なプロット。
これでもか、と畳み掛けてくる息をつかせぬストーリー展開。

ははぁー、犯人はこいつか、と思って読み進めていくと裏切られる心地よさ。


都知事候補を襲撃した犯人は誰なのか。
犯人を追っていた佐伯はどこに消えたのか。
大物俳優を弟に持つ都知事を狙撃した理由は何なのか。
大手鉄道会社を経営する一家と都知事との関係は。

渡辺探偵事務所の「沢崎」が徹底的に追いつめる。


ひとつだけ難点があるとすれば、ストーリーが入り組みすぎていて、時間をかけて読んでいると頭の中で話がつながらなくなる可能性があること。

一気に読み上げれば良いのだが、読み進めるのがもったいないとまで感じてしまう。

軽めのミステリーでは体験出来ない濃厚な味を堪能したのであれば、原尞以外には考えられない。
そう、まさしく「堪能」という表現がぴったりだ。




そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))
原 りょう
早川書房
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おすすめ度の平均: 4.5
5 凝りすぎでこわい位
4 おら、ハードボイルドだど!
4 沢崎の下の名前はなんだろう…?
4 ハードボイルド
5 沢崎に惚れる。