私が殺した少女 / 原尞 | [A] Across The Universe

私が殺した少女 / 原尞

原尞2作目にして、1989年の直木賞受賞作。

当時初めて読んだ時の衝撃を良く覚えている。
これはまぎれもない日本のチャンドラーだ。
そう思った。

そして今読み返してみても、その感想は変わらない。
といってもチャンドラー自体はもう20年以上も読んでいないのだが。




沢崎が依頼人の家を訪れると、どこか雰囲気が違った。

その家庭では、バイオリンの才能が豊かで、将来を期待されている少女が誘拐されていた。

そして、そこには誘拐犯を待つ警察がいた。
沢崎はその誘拐犯の一味と間違えられる。


訳もわからず事件に巻き込まれ、身代金の受け渡し役にされてしまう沢崎。
とあるファミレスの駐車場で殴られ、まんまと身代金を奪われてしまう。


それでも、着実に、淡々と事件の核心へ近づいていく沢崎。

犯人はこいつか、と思ったその矢先。



読者を待つ大どんでん返し。

といっても、騙された!というトリックではなく、とことんオーソドックスな展開。

そう、とことん「オーソドックス」。
だから読んでいて気持ちがいいし、落ち着ける。


ミステリーとはこれほど面白いものなのか。
いや、ハードボイルドだから面白いのか。

その両方だ。

文体がしっかりしていて、キャラクター構成が確実で、ストーリー展開が緻密で隙がなければこんなにすばらしいミステリーが出来上がるのだ。

ただ難点としては作者が寡作であること。

しかし、それなりの作品を多数生み出すよりも、原尞には傑作を生み出す寡作の作家のままででいていただきたい。
勝手な読者の意見です。




私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)
原 りょう
早川書房
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おすすめ度の平均: 4.0
5 すばらしい
3 巧みなストーリー展開
5 探偵も推理小説も因果なものだ!
4 マーロウにこの沢崎が追いついているとはとても思えない
5 ハードボイルドの雰囲気だけで無くミステリーとしても秀逸