殺戮にいたる病 / 我孫子武丸 | [A] Across The Universe

殺戮にいたる病 / 我孫子武丸

非常に良く出来ている。
わかっていても気持ちよくだまされた。
気持ちよく落とされた。
最後の最後まで引き付けられて、いきなり落とされる快感。

ストーリーに強引さはなく、読者は思わぬところで「ストン」と落とし穴に落とされるように引っかかる。
文章も巧みで、抑制が効いているために余計にスリルが増す。


非の打ち所がないほどうまいミステリーなのだが、これは読み手を選ぶ。
なぜなら、猟奇的な殺人事件が連続して起きるのだが、その描写の凄まじいこと。

その「おぞましさ」と冷たい筆運びがこのミステリーの「上手さ」のひとつには違いないのだが、子どもには間違っても読ませられない。
そこまで詳細に変質者を、その行動を描写しなくても・・・


その男は始めての殺人を犯したことにより、その快感に溺れるようになり同じような殺人を繰り返す。

一方、ある家庭の主婦は自分の息子の行動に違和感を持ち始め、息子が殺人を犯し始めたと疑いを抱く。


感情に任せて殺人を繰り返す男と、息子が殺人を犯したことを確信し始める母親。

そこに絡む被害者の妹と元警官。

それぞれの行動が少しずつある一点に向かって収束し始める。

そこで読者が目にするのは驚くべき真実だった。


これは間違いなく叙述トリックの傑作だ。
ただ、かなり気持ち悪いけど。




殺戮にいたる病 (講談社文庫)
我孫子 武丸
講談社
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おすすめ度の平均: 4.0
3 驚きの結末ではあるが
2 不自然かな
3 正直過ぎると言うか、フェア過ぎると言うか・・・。
4 あまり人には薦められませんが・・・
1 10代向け?