獣の奏者 / 上橋 菜穂子 | [A] Across The Universe

獣の奏者 / 上橋 菜穂子

なんてきれいな文章なのだろう。
この本を読み始めた最初の感想だ。

評判だった「獣の奏者」を読んでみる気になり、とりあえず文庫になっている「闘蛇編」と「王獣編」の2冊を入手した。

ファンタジーはほとんど読まないのだけれど、なぜかこの本だけは不思議に興味があった。
巡り合えたことに心から感謝したい。

闘蛇衆の村に生まれ育った「エリン」の成長物語。
実際には、エリンが生まれたのは闘蛇集の村だが、育ったのはジョウンと暮らした村と、その後入学する王獣学校。

春を思わせる暖かな日差しに包まれた雰囲気のジョウンと暮らした村。
ジョウンとの暮らしのシーンは本当にすべてが美しい。
これは読んでみなければわからない。


それに対して王獣を管理する学校に入学した後は、怪我をした王獣とのかかわりがメイン。
エリンは、心を閉ざした王獣に対して寝起きを獣舎で行い、必死に心を通わせようと努力する。

ジョウンと暮らした日々の経験が元となって、徐々に王獣と触れ合うことが出来始めたエリン。
長い年月、音なし笛により王獣の身体を硬直させることによって管理を行ってきた歴史があった。

エリンが王獣と意思疎通を行うことが可能になったとき、ある重大な秘密が隠されていたことに気づく。

物語の終盤にかけては、この秘密を軸にスリルあふれる展開が読者を待っている。


母との別離という重苦しいシーンから始まるこの物語は、エリンとジョウンが巡り合い、二人が心を通わせ始めるところから一気に読者を物語の世界へと引きずりこんでいく。
それは、もちろんストーリーの魅力も当然のことながら、その美しい文章が物語を惹き立てているからだ。

読者はその場面の情景だけではなく、読者各々の闘蛇像、王獣像を心に描き、そしてエリンとともに鮮やかに、まるで実際に見たかのように動き出すのだ。

読者は、太陽の光を浴びて美しく光る「王獣」の毛並みを読み終えた後でも鮮やかに思い起こすことが出来るだろう。

この作者の他の作品も読んでみたくなった





獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)
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5 大人にも子供にも読んで欲しいと思える本
5 掛け値なしに面白い!
3 王獣編も読んでください
5 なぜこんなにも心が打たれたのだろう
5 はまります





獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)
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5 他者との対話
5 徹底した世界観、すばらしいストーリー構成
5 表現がうまい!
4 読み応えのある1冊
5 時が立つのを忘れる