マジシャン / 松岡圭祐 | [A] Across The Universe

マジシャン / 松岡圭祐

ミステリータッチのストーリーが、「マジック」スパイスのおかげで一気に味が引き立つ、といった感じだろうか。

急に羽振りが良くなる住民があちこちで頻出する。
任意で事情を聞いてみると、口を揃えたように「目の前でお金(札束)が倍になる」という。
この不思議な現象に興味を持った刑事桝城が捜査を始める。

何かタネがあるだろう、と言う推測からマジック関連のグッズ売り場からきっかけを掴もうとするも、デパートの売り場程度では参考にならず、マジックのプロが足しげく通う専門店で、とあるマジックショーの紹介を受ける。

そこで出会ったのが、中学生の沙希。
劇場の支配人の吉賀。
そして、両親のいない沙紀の保護者代わりとなっていたのは、以前桝城が詐欺で逮捕したことのある飯倉だった。

すっかり足を洗ってまっとうな商売を始めていた飯倉。
実はマジック劇場の経営者も飯倉だった。

金が増えるトリックについて尋ねようとしたところ、支配人の吉賀は姿をくらます。

そのすぐ後、何度もお金を倍にしてもらっていた人々が、一箇所に集められ、今度は預けた金をすっかり持ち逃げされていた。

詐欺犯を追う刑事。

一方、警察署内では日本の金融システムゆるがすようなコンピューターウィルスが蔓延しつつあり、人手はそちらの方にほとんどが取られていた。

天才的な詐欺師だった飯倉は果たして本当にまともな人間になったのか。
支配人と飯倉の間には雇用関係以外に犯罪でのつながりはないのか。
持ち逃げされた大金の行方は。

沙希の協力を得ながら捜査は進む。
マジシャンを目指して、ただひたすら上へ上へと上っていく沙希を待ち構えていたものは。

これは、本職のマジシャンとしては一般の人には読んで欲しくない本だろう。
マジックのタネ明かしが、丁寧にそれも多数描かれていて、楽しい。
このタネ明かしがなければこの内容は平凡なミステリーで終わるところだが、ストーリーに絡むマジック(タネ明かし)が、絶妙なスパイスとなって面白さを倍増させている。
ミステリーとマジックに絡めたヒューマンドラマもなかなか良く書けている。

楽しんで読むことが出来る一冊。




マジシャン (小学館文庫)
松岡 圭祐
小学館
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おすすめ度の平均: 4.5
5 結末が全く書き換えられている!
5 落とし前をつけてくれる爽快な良書!
3 合体作でのシナジー効果はあまり感じなかった
5 素晴らしい。愛があるマジック小説
3 変幻自在の松岡マジック