占星術殺人事件 / 島田荘司 | [A] Across The Universe

占星術殺人事件 / 島田荘司

読み始めからやや難儀する。

なにせ事件が起きたのは昭和11年。
自分の5人の娘から、それぞれ最良の部分を用いて最高の女性を作り上げることを妄想していた、犯罪者と思しき男性の難解な手記から物語は始まる。

実際に彼の娘たちは殺害され、バラバラ死体が発見されていた。
しかし、彼女たちを殺害したのは狂気染みた考えを持つ父親ではなかった。
父親は、彼女たちが殺害される以前に屋内で殺害されていた。
時代感のある文章と、狂気を感じさせる内容が相まって、最初からこの物語の雰囲気が決定付けられる。

時は流れて昭和53年。
当時の事件は未だ犯人不明の謎のままだった。
また、殺害された女性の一部を組み合わせて作られたであろう人造人間?「アゾート」が日本のどこかに隠されている、とも言われていた。

鬱を患い、時折体調を崩す占い師「御手洗」。
その知り合いが御手洗に謎解きをけしかけ、自らも謎に挑む。
何度も事件の核心に迫りつつあると思わせながら、その説は既に過去に考えられていたものであるなど、読者は何度も翻弄される。

彼らは事態打開のため、事件に関係する人物を尋ねて京都へ向かう。
途中で警察が介入してきたことにより、事情が複雑になり彼らが推理するのに必要な時間は限られていた。
最終的に彼らは真犯人を突き止められるのか。

全体を通してやや読みにくさは否めないが、トリックが秀逸。
叙述物でだまされるようなある種の爽快さではなく、このトリックは感動に近い。
こんな面白い作品を今まで読んでいなかったのが悔やまれる。

島田荘司って初めて読んだけどすごい。
きっとすごく頭良いのだろうな。
他の作品も読んでみよう。






占星術殺人事件 (講談社文庫)
島田 荘司
講談社
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